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セルマー・オメガと呼ばれるモデルについて。その① セルマーUSA社のサックスは全てアメセルなのか?

│ 2018年8月18日 │ カテゴリー: サックスのブランドシリーズ

オメガ(162)アルトサックス

<↑オメガ(162)アルトサックス。>

お客様がオメガを持ってきてくださいました!

今回は、なんとサックス買取ラボふくおかのお客様「Kさん」が幻の銘機
(これは銘機と呼ぶに値するモデルです!詳しくは後ほど…)

『オメガ』を持って遊びに来てくださいました!しかもアルトとテナーの2種類!
どちらももちろん正真正銘の「オメガ」です。

なぜ「正真正銘の」と付けるのか?なぜ興奮するのか…?

たまにオークションなどでこの「オメガ」を見かける方も「なにこれ?セルマー?セルマーの公式の年表に載ってないけど…??」
と不思議に思っている方も多いと思います。

情報が少なく、また実物を吹き比べる機会もなかなか無いので、はっきりとした情報がほぼ無い「オメガ」なのですが「オメガ」はアメセルに負けない素晴らしいモデルだと思います。
ただ紛らわしいモデルが多く存在するのも事実です。

そこで少しでもオメガを見分ける参考になれば、と思いちょっと長めにオメガについて解説しようと思います。

 

目次

幻の銘機『オメガ』

オメガ820xxx番台とオメガ直後モデル829xxx番台

<↑オメガ820xxx番台とオメガ直後モデル829xxx番台。>

オメガが製造された「セルマーUSA」社の歴史については、海外のサイトや他のサイトを参考にした箇所が多いですが、アメセルとの混同やオメガ周辺モデルとの見分け方を身に付けるために必要な知識なので簡単に記載しました。

参考にさせて頂いたサイト

ここでは本家セルマーを「Henri Selmer Paris」、セルマーUSAを「Selmer」として区別しています。
日本国内ではあまり知られていませんが実は現在も製造・販売されている「セルマーUSAモデル」についても触れます。

この機会に「うさんくさいモデル」と言われがちな「オメガ」のすばらしさが少しでも伝わればうれしいです。

オメガとは?セルマーUSAとは?

世間では「最後のアメセル」と一部で呼ばれるオメガは、セルマーUSA社で製造されたモデルです。

…??「セルマーUSA」?セルマーってフランスじゃなかったっけ?
そう思われた方、確かにその通りです。

セルマーUSA社とは、セルマーの本社とは基本的に関係ない会社ですが、1920年代に、セルマーのアメリカ工場からアメリカ国内での管楽器販売を専業として独立した会社です。
(上記の参考サイトを見てもらえば分かるように、現在はアメリカにおいてConn-Selmer社の傘下ブランドとして本家セルマーもセルマーUSAも存在します)

ちなみに当店の在庫として、この時期の「セルマーNEWYORK」ロゴのサックスがありますので紹介しましょう。

”selmer newyork”の刻印が入ったアルトサックス

”selmer newyork”の刻印が入ったアルトサックス

<↑”selmer newyork”の刻印が入ったアルトサックス。ロゴ以外はコーンの当時のモデル”ニューワンダーⅡ”とまったく同じです。>

他社で製造したサックスを販売していた会社・セルマーUSA

ご覧頂いてお分かりの通り、セルマー製というより当時のコーンやビッシャー、マーティンに近い外観です。

この時期、本家フランス・セルマーは「model22」や「model26」というモデルを展開していますが、model22やmodel26とは全く違う見た目です。

セルマーの当時のモデル

セルマーの当時のモデル

<↑こちらがセルマーの当時のモデル”モデル26″アルトサックス。>

強いて言えば、テーブルキィの形状だけmodel26と同じです。

『セルマーUSA』サックスのテーブルキー

『セルマー・モデル26』のテーブルキー

これはセルマーUSAが当時、セルマー本家から離脱し他社(アメリカの工場)で委託製造したサックスにセルマーのロゴを付けて販売していた、という事を裏付けるものです。

その後、セルマーUSAは1960年から1970年頃まで、セルマー社のサックスを組み上げ前~つまりパーツ状態でアメリカに輸入し、それを自社で組み上げ販売しました。
これが俗に言う「アメセル」です。

…車の世界で例えると、車を製造しているトヨタなどのメーカーと、その車をカスタマイズやチューニングする会社、のような関係です。

おそらくバンディさん(George Bundy セルマーUSAの社長→参考”conn&selmer会社サイト
率いるセルマーUSA社は、本家から独立後いろいろな販路や販売方法を模索したのでしょう。

現在、「アメセル」は本家セルマーの歴史の中では取り上げられていません。
(※2018年現在、セルマー本社もアメセルを認めるようになってきたそうです)

この、「フランスから部品だけを輸入し、セルマーUSA社で組み上げられ、個体ごとに職人さんによってチューニングを施されたサックス」「アメセル」と呼ぶのです。

現在でもリペアマン(修理・調整職人)さんの腕と経験によってオーバーホールに出したサックスのポテンシャルは大きく変わりますよね。

このオーバーホールに接合部のハンダ付けや、反響板の取り付けなど当時の職人さんの感覚にまかせて1本1本チューニングを施されたサックスが、音や反応が変わるのは当然でしょう。

ここで生じるオメガ=アメセルの誤解

そうか…「セルマーUSA」社で組んだサックスは全部アメセルなのか…と思われた皆さん、ここで注意が必要です。

確かにセルマーのS.B.A(スーパー・バランスド・アクション※ちなみにこれは日本独自の呼び名)からMARK7(マーク・セブン)に至るまでのモデルは、このセルマーUSA社で組みあげられた個体を(日本では)アメセルと呼ぶのですが、その後セルマーUSA社はだんだんとサックスが売れなくなっていく事で、(この原因として日本のサックス~ヤマハ、ヤナギサワの普及があると言われています)セルマー担当の組み上げ職人たちをリストラします。

こうしてセルマーUSA社は、当時セルマーUSA社が吸収合併していたかつての定番サックス・ブランド「buescher/ビッシャー」の製造ノウハウとその職人さん達に託される事になったようです。

本家セルマーの代理販売とステューデント・モデル「バンディ」を製造(※バンディはステューデント・モデル、つまり下位モデルです)、販売していたセルマーUSA社は「オリジナルのプロモデル」を元ビッシャーの製造ノウハウで作る、という事になったのです。

こうして生まれたのが、通称「オメガ/162、164」と言われるモデルでした。
(…ちなみに現在でもセルマーUSA社は当時と同じように、アメリカにおいて本家セルマーモデルの代理販売と「ステップ-アップ・モデル」「ステューデント・モデル」といった、バンディ系列の下位モデルの製造販売を続けています。)

ヤマハの中堅モデルYAS-480とセルマーUSA社サックスの比較。右端からASモデル(オメガ直後)、真ん中AS300、そして比較用のYAS-480

<↑ヤマハの中堅モデルYAS-480とセルマーUSA社サックスの比較。右端からセルマーUSA製ASモデル(オメガ直後)、真ん中セルマーUSA製AS300(バンディ系モデル)、そして比較用のヤマハYAS-480>

ビッシャーの血を引くオメガ

つまり製造した会社は「セルマーUSA」ですが、ずっとbuescherを作って来たノウハウとスタッフ達によってこの「セルマーUSA社初のプロモデル・サックス」は生み出された事になります。

参照:buescher サックスの魅力と音の個性

オメガはいつまで生産された?まぎらわしい”オメガ”

こうして生まれた「セルマーUSA」社の通称「オメガ」はシリアルナンバーでいうと80xxxxから825xxxまでだと言われています。

ちなみに当店にはこれより3000番後の「829xxx」のセルマーUSA社製アルトサックスがあります。これは、人によっては「オメガ」と言われますが、(現に、この個体は関東の某楽器店でオメガとして売られていたそうです。)

厳密には「オメガ」ではありません。
当店ではオオタケさんの検証と説を支持しています。
(→オオタケさんのブログ「Atelier Ohtake Saxophone」)このサイトによると、当店のこのモデル(シリアルナンバー829xxxxの個体)は162/164以降のAS/TSモデルにあたり

ますので、オメガではないと考えます。

シリアルうんぬんより、まず実際に「オメガ(アルト162/テナー164モデル)」と「オメガ直後(AS/TSモデル)」は実物を見比べれば一目瞭然です。

さっそく「オメガ」(162)とこの「オメガ直後(AS)」を比べてみると…ベルの長さがはっきりと異なります。

オークションなどでもこの「オメガ(アルト162/テナー164モデル)」と「オメガ直後(AS/TSモデル)」がどちらもオメガとして出品されていたりするので、ぜひ違いを覚えておいてください。

ただし、この「オメガ直後」モデルも実際に吹いてみると素晴らしい吹奏感です。

では、実際に「オメガ」と「オメガ直後」モデルを試奏してみましょう!

「オメガ」と「オメガ直後/ASモデル」実際に吹いてみると

オメガ

<↑オメガ/162モデル820xxx番台。下のASモデルと見比べてください。”Selmer”のロゴ周りの模様が違います。>

<↑セルマーUSA社”オメガ/162″のベル部彫刻。アメセル彫刻を模した彫刻になっています。このあたりが誤解を招く所です。>

具体的にいうと、セルマー的な音のコシと色気のある伸びる音で管体の鳴りと反応は「おっ!」と思わせるものがあります。

キィの造りがセルマーに比べ雑な加工が見られるものの低音の響き方、高音~フラジオ部の芯の太さ(この部分が一番セルマーらしさを感じました)はアメセルに通じるものがあると感じました。反応に関してはアメセル的、というより吹き込まれたスーパーアクション80的、といった感じでした。

それでいて音の色気の質や音のつながりはセルマーとははっきり別のものだと感じます。これに関してはやはり「ビッシャー」という感じです。

個人的には「セルマーの反応・響きとビッシャーの音の丸さ・甘さのハイブリッド」なモデルだと感じました。

その音、反応とは裏腹に見た目は「これ、セルマー・バンディ?(チャチい…)」と思えるような、歴代の本家セルマーモデルと比べると見劣りする彫刻やロゴ刻印・シリアル刻印です。

(見慣れてくるとこれはこれでカッコ良く思えてくるのすが…)

どう見てもセルマー社のものではないと感じさせるものです。

ですがU字管と3番管をつなぐ3点支柱やキィカバーなどのパーツ類、アメセルと同じ彫刻などはまさにセルマーと同じです。

オメガ直後モデル”AS/TSモデル”

とにかく、見れば見るほど「オメガ」よりさらに怪しい(チープな?)外観なのですが、音はなかなか素晴らしいです。

オメガ以降モデルの”ASモデル

<↑オメガ直後モデルの”ASモデル(AS-100)”。こちらは829xxx番台です。また、ロゴ周りの草の模様がオメガと違います。つくりは雑ですが音は独特の色気と芯があり魅力的な音です。>

セルマーUSA社

<↑セルマーUSA社”ASモデル”のベル部彫刻。これはオメガ同様アメセル彫刻を模した彫刻です。>

「オメガ」に比べると明らかにベルが長い!(オメガの方が標準的な長さです)そして吹奏感。完全に音ヌケしきっているMARK7のような、またスーパー・アクション80の「シリーズ1(※正式にはシリーズ1とは呼びません)」つまり「エイティ」にも通じる吹奏感です。

ですが音色は、こちらもセルマーとは違う個性です。やはりオメガの延長的な音個性です。

それでいて小さい音も立ち上がりが良く、色気と温かさがあるあたりは、確かにbuescherの流れを感じます。

難点は、オメガよりサイドキーの操作性が悪い所と、オメガと聴き比べると管全体の響き・音のコシがありません。

ためしにジュビリー前のシリーズ2と吹き比べましたが、まったく違う音個性です。
はっきりと言える事は、「この個体にしか出せない音を持っている」という事です。

この事実だけでも、この個体がオメガなのかどうなのか…は関係なく貴重な個体だと言えます。
それくらい魅力的な音個性です。

外観について

こちらのモデルは、アメセルの彫刻、当時のセルマーと同じ3点支柱、ネック部の独特なロゴ
などが、オメガとしての意匠そっくりです。

ただし、彫刻と刻印などの技術はかなり(オメガよりさらに)チープです。
オメガの存在を知らなければ見た目は教材用のサックスかな?と思ってしまうクオリティです。

この「オメガ以降モデル(AS/TSモデル)」は正確にはオメガではないかも知れませんが、オメガを探している方々が求める音・吹奏感をこの個体は十分に持ち合わせています。

…ただ、キィの角度や組み上げに関しては、かなり雑だなと感じます。

逆に言えば、この雑な感じで素晴らしい吹奏感なので、きちんと組みなおすと相当良いだろうなと思えます。

ここで注意!!82xxxを過ぎると全て良いモデルなのでしょうか

セルマーUSA社の

<↑セルマーUSA社の”AS300″モデル。名前がまぎらわしいですね。現在でもアメリカで販売されている下位モデルです。(2018年現在は400シリーズ)エントリーモデルなのでかなり簡素化された造りです。鳴らしやすいですが、音にオメガの面影は全くありません。現在のセルマーUSA製造モデルは下位モデルだけで、プロモデルは存在しません。>

実際に吹いてみると、「オメガ」はもちろんのこと「オメガ直後(ASモデル)」も、オメガよりキィ周りの造りがより雑になっているものの音個性と吹奏感は素晴らしい、という事が分かりました。

…ですがここで注意が必要です。このオメガ以降のモデルはその後、アジア製サックスとの過当競争によってどんどんコストダウンを強いられます。
つまり造りも仕上がりもどんどん粗くなっていくのです。

同じセルマーUSAのステューデント・モデル「バンディ」や「バンディⅡ」のように、キィパーツや支柱が簡略化された物になっていくので、外観に注意して選びましょう。

そして出来れば試奏して判断しましょう。

まとめ

①オメガはその生まれた経緯からいろいろな誤解が多いモデルですが、実際に吹いてみるとセルマーとはまた違った音の艶とつながりを持った、素晴らしいモデルです。

オメガ直後(AS-100/TS-100)まではその音的な魅力を維持していると思います。
ですが、あまりにも後期の製造個体だとこの「オメガ」モデルからかけ離れた全く別物になっていきます。
(※AS/TSモデルは現在でもエントリーモデルとしてアメリカで販売されていますので、名前だけで判断するのは危険です。)

②セルマーUSA社はアメセルだけを製造していた会社ではありません。
当時も、そして現在もアメリカにおいてフランス・セルマー社のサックスの代理販売と自社の「エントリーモデル」の製造・販売を続けています。

そして現在のセルマーUSA社のAS400,600/TS400,600全てエントリー・モデルなので、オメガとの音個性のつながりはありません。注意が必要です。

オークションではセルマーUSA社のサックスをなんでも「アメセル」や「オメガ」として出品されているものも良く見かけます。

オメガを見かけて「正真正銘のオメガ」か判断に迷った時は、ぜひこの記事を参考にしてください。

また、続編記事も書きましたのであわせてお読みください。

まぎらわしいASモデル(オメガ直後)と162モデル(オメガ)を画像で比較。セルマー・オメガと呼ばれるモデルについて。その2


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