サックスネックを交換するメリットと音の違い。【中古ネックの選び方】
ネックを換えると音が違う…、それは演奏者がサックスの吹き方を変えてるだけじゃないの?と思っていませんか??
<↑ヤマハのアルトサックス用ネック。左から62ネック、G1ネック、ノーマルネック。>
目次
サックスはネックで音色が変わる!
音が違うという部分は、大きく2つに分ける事が出来ます。
その(1) 音色
その(2) 吹奏感
(1)はまさしく「音色が変わる」という事になります。
これは、吹き手である自分自身はあまり違いが分からない、というケースもあります。
(2)は自分自身の吹き心地、つまり吹奏感や息の抵抗感がイマまでと違うと感じる場合です。
これは、(1)とは逆に聴衆からは音の違いを感じないケースがあります。
サックスの音色に影響があるパーツ
ネックだけではなくて、サックスの音色を決めるパーツは結構あります。
音がはっきりと変わる要素として思いつくままにいうと、まず楽器自体。
これは当たり前ですね。
楽器自体、つまり管体は管体に使う素材と管体のコーティングの組み合わせで吹奏感と音色が変わります。
- 管体の素材~スターリング・シルバー(銀)・銅・真鍮
- コーティング~ゴールドプレート・ラッカー・シルバープレート・ニッケルプレートなど
その次にマウスピース。
そしてリガチャーですね。
ここで、以外に見落としてしまうのが「ネック」です。
実はネックはマウスピースと同じくらい音そのものを変える重要な要素なんです。
サックスは人間の身体から息を出して音を出す楽器なので、口に近い部分から音作りに影響を与えやすい、と言われています。
つまり、マウスピース、ネック、そして管体の順に音色・音量に影響を与えるという事になります。
<↑関連動画:ヤマハサックスのネック吹き比べ動画です。標準マウスピースを使って4本のネックを吹き比べています。>
サックスネックはいろいろある
<↑セルマーのゴールド・プレート(ラッカーではなく金メッキ)ネック。通常のネックと違って彫刻が入っています。>
<↑ヤナギサワの中堅機種用ネック(ブロンズ・ブラス製)ヤナギサワのサックスは、上位モデルと中堅モデルでネックの形状がちがいます。>
<↑ヤナギサワの上位モデル用ネック。アッパータイプといってオクターブ機構がちょっと変わった作りです。上画像の中堅モデル用ネックと見比べてみてください。ちなみにこのネックはシルバー・プレート(銀メッキ)仕様のものです。>
ネックって、マウスピースと違ってどうしても楽器本体の一部、という認識なのでいろいろ取り替えるっていう発想を持ちにくいですよね。
ですが最近ではサックスのバリエーションが増えて、ネックだけゴールドプレートのモデルだったり、ヤマハのYAS-480のように、後からネックをいろいろ取り替えられる事を謳っているモデルがあったり、とだいぶネックも選べるようになってきました。
例えば、ネックをシルバー・プレートやゴールド・プレートに換える事で、もっと音を柔らかくしたり艶やかにしたり…という事が出来ます。
管体全部を総銀やゴールドプレートにすると50万から100万以上の予算を覚悟しなければいけませんが、ネックだけならもっと現実的な予算で済みます。
しかも中古ネックならゴールドプレート・ネックでも1~2万で探す事も可能です。
そこでここでは、中古ネックを探すために必要な知識をまとめたいと思います。
サックスネックを交換するメリット
さきほども書いたように、サックスの音色にとってネックは、実はとても大きな影響を与えるパーツです。裏をかえせば、ネックを換えるだけで、音色を大きく変える事が出来るという事になります。
ネックを換えるメリットその1
自分の楽器に不足している部分を補える
例えば、「操作性は気に入っている、または音の出しやすさは気に入っているんだけど、音が軽いんだよな…ジャリッとしたシブさがあればいうことないんだけどな。」なんていう場合は、ネックをシルバー製に換える事で解決する事もあります。
ネックを換えるメリットその2
楽器自体を変えずにいろいろな特性を試せる
現代のサックスは、本当にいろいろな素材のものがあります。
ただしブラス製以外の素材管体はたいてい値が張ります。
そこでいろいろな素材が気になる方は、「ネックだけいろいろと換えてみる」という方法が有効です。
コストもおさえられるし、今使っている使い慣れたサックスのまま、ブロンズ素材やシルバー素材の特性を体験できます。
ネックには3タイプある
ネックは実は素材の違いだけではありません。
各メーカーから単体ネックが出ていますが、ここでは3つのタイプに分けます。
タイプ1: 純正ネック
<↑セルマー・スーパーアクション80シリーズ2用の純正ネック。(ジュビリー・モデル)ネック単体でも販売されています。>
これはもちろん、純正のネックが壊れたり、なくしたり(?)した際、交換する目的で販売されているタイプです。
例えばセルマーのシリーズ2用ネックなどがそうです。
仕上げもラッカー製で「もともとついてくるネック」と同じです。
ですが、最初に書いた通りその機種の音色はネックで作られている部分も大きいので、「セルマー・セレスのAXOSに、シリーズ3のネックをつける」というようなカスタマイズに使えます。
純正ネックを使って、「そのブランドの特性を取り入れたい」場合、個人的経験からオススメなのは以下の組み合わせです。
- アンティグアにセルマーの純正ネック
- セレスアクソスにセルマーの純正ネック
※ネックと管体は時期や種類で微妙に口径が違います。
一度実際にはまるか試してからの購入をおすすめします。
タイプ2: 口径違い
これは特にヤマハのネックに見られます。
ネックの口径や角度を変える事で音のキャラクターを変える、という発想です。
ヤマハもゴールドプレートやシルバーネックなど作っていますが、一番力を入れているのは、この「口径サイズで吹奏感と音色を変える」という技術です。
※同じヤマハのサックスでもネックの交換が可能なのは480、62,カスタムと中堅~上位機種だけです。また、他ブランドのサックスには基本的にはまりません。
ヤマハのネックはG1,V1などたくさんのバリエーションが販売されていますがこれらは全て「ネックの内側の容量の違い」で分かれているのが特徴です。
タイプ3: 仕上げ違い
セルマー、ヤナギサワの単体ネックがこれにあたります。
「素材や仕上げの違い」で音の個性を変えよう、というネックです。
素材と仕上げの種類は、上記「サックスの音色に影響があるパーツ」に書いたものと同じです。
またひとくちに「ゴールドプレート」「シルバープレート」といっても、実はゴールドもシルバーもその純度で特性が違います。
(→詳しくは「スターリング・シルバーと純銀と洋銀の違い」「ゴールドプレートや金素材のサックス」の記事を参照してください)
注意!ネックはどのメーカーにも使える訳ではありません
さきほども少し触れましたが、中古ネックを探す時に一番気を付けなければいけないのは、「ネックはどれにもハマるものではない」という点です!
一般的にはセルマーの管体にはセルマーのネックしかハマりません。
また、同じメーカーのネックでも、機種によってハマるものとハマらないものがあったりします。
たとえば、ヤナギサワの901ンシリーズのネックは902シリーズには使えません。
もっと細かい事を言うと、例えばセルマーのMARK7とMARK6はネック部の口径が違う設計になっていたりするので、同じメーカーでも機種にによってはハマらないネックもあります。
逆に、違うメーカーなのにうまくハマるものもあったりします。
例えば、上記の「オススメの組み合わせ」で触れたように、アンティグアの管体にはセルマーのシリーズ2のネックは上手くハマります。
カメラレンズのマウントアダブターのように、違うメーカーの口径を合わせるようなアイテムは、今のところ販売されていません。
という事で、中古のサックスネックを探す時は、自分の管体に目当てのネックがうまくハマるか、またはブカブカでないか、充分に下調べしてから購入しましょう。
サックスネックの交換はこんな時に考えてみよう
それでは、実際にどういった場合、「自分のサックスにも違うネックを試した方がよさそうだな…」となるのでしょう。
例えば…
ケース(楽器を気に入っているけど音色がもう少し…)
「今のサックスをずっと練習し続けたおかげで、キィのスプリングが良い具合にヘタってきて早いパッセージも演奏しやすくなったな!でも音がカタすぎるのがたまにキズだな。もう少しバラードでじっくり聞かせられるといいんだけど…」
こんな場合はシルバープレート・ネックを試したり、ゴールドプレート・ネックを試したりすると良いかもしれません。
シルバープレート・ネックは、一般的には「シルバー・プレート」つまり真鍮管にシルバーをかけたものを指します。(もちろん素材が銀のものもありますが、銀製ですのでお値段がだいぶ高くなります。)
シルバープレート・ネック
シルバープレート・ネックを使用すると倍音が増えバリっとした音色と共に、音と音がつながりやすくなる傾向にあります。(もちろん個人差はあります)
参考→スターリング・シルバーと純銀と洋銀の違い。銀色のサックスなどの楽器の銀の純度や音の影響は?
ゴールドプレート・ネック
ゴールドプレート・ネックの場合は、音が大きく艶やかになる傾向があります。その代わりゴールドプレートの良さを引き出せる音量も必要になります。
参考→ゴールドプレートや金素材のサックスや管楽器は何がいいの?素材や音について~24金や18金の違い~
ニッケル・プレートのネック
ニッケル・プレートのネックの場合、音が硬くなる傾向にあります。
まとめ
今のサックスは今の自分に馴染んでいて買い換えたくない。
でもシルバーやゴールドの素材の良さも取り入れたい…
そんなわがままに応えてくれるのが一部パーツを素材違いに交換するという方法です。
ネックやマウスピースはその中でも一番吹奏感を変えてくれます。
またネジ1本、シルバー素材のネジに換えるだけで驚くほど吹奏感が変わったります。
ぜひこういったパーツのカスタマイズも試してみてください!
あわせて下記もお読みください。
参照:中古サックスの選び方。初心者にもオススメ!新品にはない魅力