Selmer Sax Reference36 セルマーのサックス・リファレンス36は2モデル存在するのを知っていますか?
実は!セルマーのサックス「リファレンス」には初期型のreferenceとjubilee(ジュビリー)モデルのreferenceがあるんです。
しかも公にアナウンスされていませんが、この「前期モデル」と「jubileeモデル」、味付けがけっこう違うので、リファレンスの購入を考えている方はどちらも比較した方が良いくらいのレベルです。
この事実を知らない方が多いので、今回は当店(サックス買取ラボふくおか)にある「セルマー・リファレンス36 テナーサックス前期モデル」と「セルマー・リファレンス36 テナーサックス・ジュビリーモデル」を比較してみたいと思います。
参照
製造年での違いを知りたい方はセルマーのアルトサックスシリーズ2の製造年での違い【jubileeとjubilee前モデル】
セルマー・リファレンス36 テナーサックス・前期モデル
こちらは現行モデル「ジュビリー」に変わる前に造られた「セルマー・リファレンス reference36 」です。
サックス買取ラボふくおかにあるセルマーreference36 前期モデルは61万番台。
2001年頃の製造です。
ジュビリーモデルへの変更が2010年からなので、こちらはその前モデル、つまり「ジュビリー前」モデルというわけです。
ちなみにジュビリー前のセルマー・リファレンスはシリアル番号でいうと593201番から70万番台直前くらいまでのものです。
色は「アメ色」のダークゴールドのラッカーで、現行「ジュビリー」よりアメセルのような色です。
セルマー・リファレンス36 ・ジュビリー(jubilee)モデル
こちらは現行モデル「ジュビリー」モデルの「セルマー・リファレンス reference36 」です。
現在、新品で入手できるのはこのjubileeモデルだけです。
それではまず見た目の違いを1つ1つ見ていきましょう。
Selmer reference36 前期モデルとjubileeモデルの外観の違い
セルマー・リファレンス36 ・ネックの違い
まずはネックのエンブレム。私くらいより上の世代にはいちばん見慣れたエンブレムですね。
こちらが現行のエンブレム。(jubileeモデル)
今度はネック部の比較。セルマー・リファレンス36・前期モデルのオクターブパーツ部です。
これに対し、jubilee(ジュビリー)モデルは若干シンプルです。
響き向上のため?それともコスト軽減のため?支柱も省略されています。
セルマー・リファレンス36・”ド”のキーの違い
こちらが「セルマー・リファレンス36 前期モデル」のキィ形状。
テーブル部に違いはありませんが、よくみるとポール(柱)とテーブルをつないでいる部分に違いがあります。
そしてこちらが「セルマー・リファレンス36 ジュビリーモデル」。
違いは位置にあります。
ジュビリーモデルの方が、やや下についていて、私の手のサイズだとちょうど小指が自然に当たる位置についています。
これに比べると、前期モデルはやや小指を上にあげる感じ。
わずかな差なので、手が小さい方は前期モデルの方がより自然な位置に感じるかもしれません。
セルマー・リファレンス36 ・彫刻の違い
「セルマー・リファレンス36 前期モデル」
彫刻はジュビリーモデルの方が圧倒的にゴージャスです。
「セルマー・リファレンス36 ジュビリーモデル」。
セルマー・リファレンス36 ・サイドキーの違い
当店(サックス買取ラボふくおか)在庫のセルマー・リファレンス36・テナーサックス前期モデルは、サイドキーにコルクを付けて微調整してあります。
こちらの方が個人的にはビンテージっぽくて好きです。
対してセルマー・リファレンス36・ジュビリーモデルのサイドキー
ややボタン部の厚みがまして、あまり手を大きく動かさなくても操作できるような位置になっています。
セルマー・リファレンス36 ・U字管まわりの違い
U字管の接合リング
ここが音の違いを生み出しているポイントだと思います。
セルマー・リファレンス36・前期モデル。
セルマー・リファレンス36・ジュビリーモデル。
セルマー・リファレンス36 ・サムフックの違い
そして最後に、サムフックが違います。
セルマー・リファレンス36・前期モデル
セルマー・リファレンス36・ジュビリーモデル
こうやってみると、ジュビリーモデルの方がより響くように変更してあるようですね。
elmer reference36 前期モデルとjubileeモデルの音の違い
※以前アルトの「セルマー・リファレンス54」を試奏しレポートしています。
セルマー selmer reference アルト 試奏しました!【YAMAHA YAS-62/62ネックと吹き比べ】
セルマー・リファレンス36 ・前期モデルの音
音はセルマー リファレンス36 ジュビリーモデルより丸く、ストレートに音が出る吹奏感です。
吹き込む事でより40~50年代のビンテージなサックスのような音が出せそうな音です。
素直で素朴な音が特徴という気がします。
そしてキーがジュビリーモデルより小ぶりで扱いやすさが際立ちます。
セルマー・リファレンス36 ・ジュビリーモデルの音
これはjubileeモデル全般に言える事ですが、音の輪郭がハッキリしていて、どちらかというとレコーディング向きの音です。
輪郭がはっきりしているためピッチが取りやすい気がします。
吹きやすさ・操作しやすさは(これはジュビリー前もジュビリーも関係なく現行シリーズ中一番だと思います)「さすがリファレンス」という感じです。
音の感じが前期と比べ、明らかに音のくっきり感が「アナログとデジタル」くらいに違いますが、音量・輪郭のキレはシリーズ3の方が大きいです。(その分、シリーズ3は息の量が要る感じです)
まとめ
個人的には、マウスピースで例えるなら「前期モデルのリファレンス36がラバーマウスピースのような感じ、jubileeモデルのリファレンス36がメタルマウスピースのような感じ」です。
しかしセルマー・リファレンス36はもともと「スーパー・バランスド・アクション」の流れを汲んでいるはずなので、前期モデルより若干モダンな響きに仕上がっているジュビリーモデルは、好みが分かれる所でしょう。
前期モデルの方が(個人的には)もっとプレーンな感じで、「自分で色付けを工夫してね」という感じがします。
それでも「スーパー・バランスド・アクション」を期待しなければ、「リファレンス・シリーズ」はセルマーの現行シリーズ中最も扱いやすく、所有欲も満たしてくれる美しく素晴らしいサックスであることに間違いありません。しかし、こんなに味付けが違うのにあまり話題として取り上げられていないのが不思議です…
こうしてたくさんの中古(特にセルマー)を見てみると、現行機種も公にされていないだけで、かなり頻繁にマイナーチェンジされていて、シリアルナンバー毎に音のテイストが違う事が分かります。
スーパーアクション80 シリーズ2にもこの傾向はあるので、おそらくセルマーはビンテージに限らず、シリアルナンバーで区切って音を比較した方が良さそうですね。
サックスは中古が、単なる新品のおふるではない、という事がお分かりいただけたのではないでしょうか。
愛器を選ぶ時は、自分のあこがれの音やミュージシャンをイメージした上で、価格の安さだけでなく、音の個性や操作性に重点を置いて、新品も中古も比べると、永くつきあえるサックスを手に入れられますよ。